2013年6月24日月曜日

中国短期市場、流動性逼迫で銀行依存度の大きさ伴うリスク露呈

中国人民銀行(中央銀行)がかざす鏡には、国内銀行システムの思わしくない状況が映し出されている。あまりに多くの銀行が銀行間取引市場(短期金融市場)に依存した経営を行っており、業界の全面的な改革が必要になっている。

人民銀行は、短期市場において流動性供給を絞ることで膨らみ過ぎた銀行に警告を発してきた。だが、全面的な金融危機をもたらす判断ミスへの懸念が増しつつある、というのがアナリストの見方だ。

人民銀行は急速な貸し出しの伸びを抑えることを決意し、それによって短期市場の取引金利が過去最高水準まで跳ね上がるとともに、いくつかの銀行がデフォルト(債務不履行)に陥るのではないかとの観測も浮上している。

こうした金融引き締めは特に、近年拡大してきた銀行以外の貸し出し、つまりシャドーバンキング(影の銀行)を標的にしているとみられている。

ムーディーズ・インベスター・サービス(香港)のシニア中国銀行アナリスト、フー・ビン氏は「現在の短期市場における流動性逼迫の背後にあるより構造的な要因は、銀行が短期資金を長期的な事業の支えとして利用していることだ」と指摘する。

フー氏によると、とりわけ一部の銀行が高利回り金融商品を通じた借り入れについて、返済に必要な資金を短期市場からの調達に頼っている。これは世界金融危機の際にいくつかの欧米の銀行にとって問題となった構図と似通っている。

こうした中でフィッチ・レーティングスのシニアディレクター、チャーリーン・チュー氏は、足元の人民銀行の姿勢に関して「シャドーバンキング経由の貸し出しの伸びを抑えるという面で、より動きが速くなり、明らかに効果が上がっているのは間違いない。しかしそれは、銀行間において大きな資金返済のリスクを生み出し、さまざまな意図せざる結果がもたらされる可能性がある」と懸念を示した。

中国経済における今年1─5月の資金調達総額は、前年同期比で52%増加した。アナリストによると、主導したのはシャドーバンキングの活動や投資家に高利回りを約束する「理財商品(WMP)」の販売の急拡大だった。

フィッチの推計では、昨年末までに販売されたWMPの総額は13兆元で、銀行預金総額の16%強。

より目先の話としては、1兆5000億元強のWMPが6月の最後の10日間で償還期限を迎える。これが一部の銀行が短期資金の確保に奔走している理由かもしれない。

<理財商品>
各銀行は、社債、非公式の証券化債権などを組み合わせてWMPを組成してきた。そしてこれらの多くは簿外で保有され、銀行は預貸比率の規制をクリアした上でなお、新たな貸し出しが可能になる。

またWMPは長期資産をベースにしている場合が多く、銀行は償還期日には新たなWMPを組成して資金を調達するか、あるいは短期市場で借り入れる。

中国当局はこれまでもシャドーバンキング、ことにWMPを規制しようとしてきたが、このセクターの成長を止める効果はほとんど見られなかった。そこで今、人民銀行が短期市場で資金供給しないという強い態度で臨み、17日からの週に短期金利が一部で25%もしくはそれ以上まで高騰する事態になった。

フィッチのチュー氏は「現在の重要な問題は、こうした人民銀行の姿勢がいつまで続くかにある。もししばらく続いて業界再編が始まるようなら、今度は当局がその動きにどう対応し、統合が視野に入ってくるかどうかが問われる」と話した。

より小規模な銀行は、国内支店網の密度が低く、それゆえに預金獲得能力が劣るので、銀行間市場の流動性逼迫に対して脆弱度が高い。

バーンスタイン・リサーチのシニア銀行アナリスト、マイケル・ワーナー氏が今月公表したリポートによると、中国の中堅銀行の総資産に占める銀行間市場資産の割合は昨年末時点で25%だった。2009年は15%だったという。

このためワーナー氏によると、短期市場における借り入れのデフォルトが相次げば、比較的小規模な銀行の存続が深刻に脅かされてしまう。

同氏は「中国の多くの銀行と話をすると、『これらの借り入れは常に返済されてきたので、リスクはない』との声をよく耳にする。この種の心理状態は、消えてなくなるだろう」としている。

昨年末時点では、バーンスタインの調査対象で非エクイティ性負債のうち期間1年未満の銀行間借り入れの割合が最も高かったのは、民生銀行<600016 .ss=""><1988 .hk="">の29%だった。同氏によると、このほか光大銀行<0165 .hk=""><601818 .ss="">や興業銀行<601166 .ss="">、平安銀行<000001 .sz="">なども銀行間市場の借り入れ依存度が高い。

<銀行の構造改革>
短期市場の借り入れに過度に依存する銀行には、選択肢がある。1つはより多くの資産を預金でファンディングできるようにバランスシートの規模を縮小する道。もう1つは、ほかにもっと安定的な資金調達手段を探し出すことだ。

銀行が後者を選ぶ場合、株式や長期債務の発行ができるが、こうした割高な調達手段を使えば、純利ざやが圧迫されて収益力が損なわれる。

一方、人民銀行はデレバレッジ(資産圧縮)が好ましいと考えているもようだ。上海のある大手国営銀行のトレーダーは「人民銀行は銀行や、ファンド、証券会社、資産運用会社などに対してデレバレッジを強制する決意があるように見える」と述べた。

その上でこのトレーダーは「人民銀行の強硬姿勢は、シャドーバンキングやウエルスマネジメント、信託など金融機関による本業以外の事業に対する最近の政府の締め付けに符合している」と解説した。

また人民銀行傘下の金融時報は、流動性逼迫やデフォルトのうわさによって、中国で預金保険制度の迅速な導入を促すきっかけが提供されたと伝えた。
こうした制度ができれば、銀行が資金不足に陥っても当局は預金者を確実に保護することによって個別銀行を救済する必要がなくなる。
(引用元:ロイター)