2013年6月24日月曜日

“異質”な銀行、セブン銀行の収益構造 純利益率20%

最大手の三菱UFJFGをはるかに上回る利益水準! 
ATM銀行ともいうべき”異質”な銀行、「セブン銀行」!

 セブン銀行は、現金自動預け支払機によるビジネスが中心。ユーザーがATMを利用すると、提携している金融機関から手数料を得る仕組みだ。すなわち、ATM銀行だと言える。

 2001年のスタート当初は、メガバンクの関係者などから「ビジネスとして成り立つの?」とか「銀行の本来業務ではない」などと冷ややかに見られたものだが、そんな低評価を覆し、立派にビジネスとして成立。今や高収益を実現している銀行だ。一般企業の売上高に相当する経常収益に対する純利益の割合はおよそ20%。最大手の三菱UFJFG約18%を上回る水準である。


 セブン銀行が運営する、ATM1台の概要を見ておこう。

 設置台数や利用総数などから計算すると、ATM利用者から得る手数料は1回平均130円強。そんな利用客が1日に110人以上もいることから、ATM1台が1日に得る収入は1万3,000円を超す。

 一方、セブン銀行のATMはグループ内のコンビニやスーパーへの設置が中心だが、グループ内とはいえセブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂などに「設置・管理」の対価として手数料を支払うことになっている。そうした費用は、1台1日1,600円台から1,700円強である。

 つまり、収入から費用を差し引いても、セブン銀行のATMは、1台ごとに、毎日1万数千円を稼いでいるわけだ。1年間では400万円を軽く超す。

■ATM導入を増やすほど儲かる? それともコスト?

 ATMの導入費用はどうか。

 年度における増加台数と投資額から計算すると、11年度は1台314万円だったが、12年度は893万円に跳ね上がっている。新型のATMに入れ替えていることが要因だろう。その結果、ATM1台の平均資産価値は10年度46万円が、12年度は78万円弱になっている。それでも、1台が1年間に400万円を稼いでいたら、十分にペイするはずだ。

 ちなみに、1日の預り金というのは、ATMでの相手先銀行への入金が決済時間ではないことから、翌営業日まで一時的に預かるお金。仮払金というのは、都銀や地方銀行などの顧客が、セブン銀行のATMで出金した際、当該金融機関との決済までのあいだ、一時的に支払う金だ。預り金、仮払金とも年度を経るにしたがって、金額が大きくなっている。利用客1人当たりの入金や出金額が増えているものと推定される。

■売上高は右肩上がりで上昇、従業員の平均年収は600万円台にダウン

 セブン銀行の売上高は右肩上がりで上昇。12年度は1,000億円に迫る941億円(単体ベース)である。純利益も着実に増加傾向を示しており、12年度はおよそ195億円だった。

 では、待遇面はどうか。「給与・手当」総額は増額での推移しているものの、従業員の増加もあり、従業員年間平均給与は下降傾向。800万円台から600万円台へのダウンになっている。

■イオン銀行、地方銀行と比較すれば、セブン銀行の“異質さ”が見えてくる

 セブン銀行は12年10月に、米国のATM運営事業会社を約1.3億ドルで買収。ATMによるビジネスを海外でも展開していくわけだ。そんなセブン銀行のライバルはどこか。

 あえて挙げればイオン銀行だろう。ただし、イオン銀行はイオンクレジットサービスと経営統合し、イオンフィナンシャルサービスを結成。セブン銀行とは異なり、総合金融路線を歩むようだ。

 セブン銀行はATMビジネスを中心に展開しているだけに、預金量はおよそ4,000億円規模にとどまり、銀行としては下位ランクに属する。ただし、セブン銀行と同規模かセブン銀行をやや上回る預金量の地方銀行で、利益水準がセブン銀行に届く銀行は1行もないのも事実。従業員の平均給与も同様だ。ATMに特化した戦略が的中しているということだ。