2013年6月14日金曜日

米FRBは今度こそ本気、債券投資家は買い入れ縮小を確信

米連邦準備理事会(FRB)は今度こそ本気。

(以下引用)
これが米国債投資家の見方だ。FRBが近く総額2兆5000億ドル・4年半の債券買い入れプログラムを縮小すると信じており、米国債市場の動揺を招いている。

米国債市場の取引はここ数日間、振れが非常に大きく、トレーダーが流動的な市場に対応しようとするなか、ボラティリティが高い状態は今後も続く可能性がある。指標の10年物米国債利回りは、5月始めは1.60%だったが、この6週間の間に2.19%まで急上昇した。

その結果、債券ファンドからは急激な資金流出が起き、米国債入札でも需要の低さが目立っている。こうした資金流出やボラティリティの高さは、FRBが実際に金融緩和策の縮小に動いたとき、どのような事態が起きるのかを垣間見せてくれる。

世界最大の債券ファンドを運用するパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)で、米国債・デリバティブ取引を担当するスティーブ・ロドスキー氏は「さまざまな市場の取引高や動きを見ると、金融緩和から緩和縮小、そして引き締めへと至る道のりは平坦でないことが分かる」との見方を示した。

一方、国債市場の今後のボラティリティ予想も大幅に上昇している。長期債利回りの将来のボラティリティ予想を反映するメリルリンチMOVE指数.MERMOVE1Mは、週明けの10日には84.7となり、およそ1年ぶりとなる高水準を記録した。

FRBに逆らうことは、これまで長らく、悪い戦略と見なされてきた。しかし今や、4年間に及んだ大規模な金融緩和のあと、多くの投資家は、FRBが市場の動きを主導しなくなった時どのように行動すればよいのか、分からなくなっている。

利回り上昇に伴い、投資家は債券ファンドから資金を引き揚げている。インベストメント・カンパニー・インスティテュート(ICI)のデータによると、6月5日までの1週間には、109億3000万ドルが債券ファンドから流出、週間ベースとしては、2008年10月15日以来で最大規模の流出となった。ICIによると、債券ファンドへの資金流出入状況は、これまでは21カ月連続で流入となっていた。

 クレディスイスの米金利取引責任者、ゲング・フー氏は「市場にはもはや異なる見方はない。少数の非常に大きなプレーヤーがおり、その全員がFRBに追随している。つまり、FRBが緩和を縮小すれば皆が同時に手を引くことになる」と述べた。

 さらに大手ディーラー銀行は規制が足かせとなり、大規模な債券売りを吸収することが難しいかもしれない。金融機関がとるリスク低減を意図した新ルールでは、銀行のバランスシートが縮小することを意味し、価格のボラティリティの上昇につながる可能性がある。今週の3年・10年・30年物米国債入札はいずれも不調だった。

 <転換点>
米国では現在、インフレ率はFRBがターゲットとしている2.0%を下回っており、失業率もターゲットである6.5%を上回っている状況。こうしたなか、FRBがすぐに債券買い入れプログラムを縮小するとは、皆が考えているわけではない。

 UBSの世界金利戦略責任者、マイケル・シューマッハー氏は「市場は債券買い入れ縮小がごく近いとの考えにとりつかれているようだ。それは完全な誤解であり、早期に縮小が実施される可能性は、極めて低いと言えるだろう」との見方を示した。

ただし、市場が今や転換点に近づいているというのは、多くの一致した見方だ。つまり、金融緩和プログラムを受けて経済成長がしっかりと軌道に乗り、FRBのバランスシート拡大をやめることができる状態になったのか、もしくは、一段の金融緩和のメリットよりも、資産バブルのリスクや市場をゆがめるリスクのほうが大きいのか──転換点とは、現状がこのうちどちらの状態なのか、クリアになるということだ。

TCWの債券担当最高投資責任者(CIO)であるタッド・リベル氏は「QE(量的緩和)があと12─18カ月続いた場合には、金利は上昇するだろう」と指摘。「QEには大きな力があるが、その力はFRBが厳格に管理・誘導できるものではない。過剰流動性が最終的にどこに行くのかを決定することはできない。そうした流動性は新興市場、住宅市場、株式市場に向かうかもしれない」との見方を示した。

FRBが市場から手を引くことに伴う悪影響は、これまでにもQEプログラムの間に、現れることがあった。しかし、景気が悪化してFRBがすぐに措置を講じたため、そうした悪影響は一時的なものだった。ただ投資家は今回、FRBがバランシシート拡大をやめても、景気はそのショックに耐えうる状態にある、と考えている。 ロード・アベット&Coの債券ストラテジストであるゼーン・ブラウン氏は、金利がより正常な水準に戻れば、バークレイズUSアグリゲート債券指数をベンチマークとする投資家は向こう5年間、トータルリターンがゼロになる、と指摘する。

「5月は、投資家がついに、債券投資で損失を出したという点で、特筆すべき月だ。5月は、向こう数年間の状況を示す縮図ととらえることができる」としている。

FRBの買い入れが長引けば長引くほど、トレーダーにとっては、FRB不在の市場に慣れることが難しくなるだろう。前述のクレディ・スイスのフー氏は「FRBはなんとかして市場から手を引き、市場が自律的に機能できるようにしなければならない。自然な需給で相場が動くようにしなければならない」との見方を示している。
(引用元:ロイター)