2013年6月11日火曜日

「日本版LTRO」見送りで円高・株安に、不安定化なお懸念

日銀が10日、11日に開催していた金融政策決定会合で、年0.1%の低利による長期資金の供給「日本版LTRO」の導入を見送り、東京市場は円高、株安、債券安に動いた。

(以下引用)
乱高下を繰り返す長期金利の安定に向け、海外投資家の間で導入への前のめりな観測が広がっていたが、その思惑が外れたためだ。黒田日銀としては「戦力の逐次投入はしない」という筋を通した格好だが、追加措置をめぐる思惑は、足元の相場安定につながってきただけに、再び不安定な展開になることを懸念する声が強い。

「今回は(緩和方向に)折れると思ったが、折れなかった。金融緩和を迫られればそれに応じていた白川日銀とは異なり、市場を突き放した」──。ニッセイ基礎研究所の矢島康次チーフエコノミストはそう指摘する。

この日の会合をめぐって、市場では固定金利オペの期間延長だけでなく、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の増額などの思惑が飛び交っていた。しかし、それらがすべて見送られた。
この日正午前、実質ゼロ回答のヘッドラインが伝わると、昼休みだった株や債券市場の動きを待たずに、円相場は急ピッチに円高に振れた。それまで1ドル=98円75銭前後で推移していたドル/円 は、あっさり節目の98円を割り込み、下げ幅は今日の高値から1円を超えた。

海外のファンド勢が一斉に売りに傾いたためという。これを受けて株価は大きく値下がりし、日経平均 は一時200円安の1万3300円前半で推移。円債市場では先物相場が売られ、中心限月 は一時前日終値より59銭安い142円35銭で取引された。

追加措置の観測は最近の市場安定につながっていた。それだけに今後、再び荒っぽい展開になりかねないとの見方が市場では強い。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「市場はかなりの部分を織り込んでいただけに、一定の失望感からボラティリティが高まりやすくなりそう」と指摘する。

FXプライムの上田眞理人取締役は「4月以降は政策期待で上昇してきたが、その持続力に陰りが出るなかでの『ゼロ回答』。取引一巡後のドル/円は、いったんは下げ止まっているが、今後、海外市場でドル/円の下値リスクが高まる可能性がある」とみる。

<海外動向、見極めも>
もっとも「4月の異次元緩和から3カ月もたたずに、追加策を求めるにも無理がある」(証券ジャパンの大谷正之調査情報部長)と冷静な見方もある。黒田日銀総裁は量的・質的緩和に踏み切った4月の時点で「戦力の逐次投入はしない」と明言しており、「市場の状況が悪くなっただけで『おいそれ』と追加緩和に踏み切られても、政策遂行の整合性が保てない」(大手銀行)との声も、市場にはある。
(引用元:ロイター)