2013年5月24日金曜日

ニュースの当事者ではない日本市場が襲われた理由

日本の投資家は、すでに大きく上げていた相場に飛び込むことのリスクをあらためて教えてくれた。
(以下引用)
問題は、そうした市場が過大評価されているというわけではなく、そこが投資家が不安を募らせたときに利益を確定する場所になっているということである。

この24時間で、世界の投資家は市場を動かす2つの大きなイベントを伝えるニュースに対処しなければならなかった。

1つ目は米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の予期せぬコメントだった。FRBが「今後数回の連邦公開市場委員会(FOMC))」の1つで量的緩和策を抑制し始める可能性を示唆したのである。その次に、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化が伝えられ、世界の経済成長をけん引するメーンエンジンの1つが減速しているという不安を再燃させた。
ところが、こうした新たな展開の影響を一番大きく受けたのは米国でも中国でもなく、日本だったのだ。

 5月23日の東京株式市場の取引が終了したとき、日経平均株価は7.3%も暴落していた。これは1日の下落率としてはこの2年間で最大であり、日本国債の利回りも記録的な乱高下を示した。おまけに、トレーダーたちが円のショートポジションを巻き戻したため、失われていたかに思えた「安全資産」という地位を取り戻した円は対ドルで2.7%も上昇した。

 これとは対照的に、バーナンキFRB議長が米議会の上下両院経済合同委員会で米東部夏時間22日午前10時に証言し始めてからのダウ工業株30種平均の下落はわずか1.0%ほどにとどまり、上海総合指数の下落も1.2%で済んだ。また、アジアでの取引で円が急騰していたころ、中国の経済データが弱含むと通常は対ドルで大きく価値を落とすオーストラリアドルの取引時間中高値から安値の下落幅はわずか0.8%で、その後は盛り返し、終値では上昇となった。

 そうしたニュースの傍観者であるはずの日本の市場がこれほどの影響を受けたのはなぜか。中国の需要鈍化に対して日本の輸出業者が脆弱(ぜいじゃく)であることは、株式市場暴落の一因でしかなく、円の急騰の説明にはならない。日本銀行がより積極的に金融緩和に取り組んできたことで、日本の株式市場は昨年10月の初めから実に81%も上昇し、円の価値は対ドルで25%も下落した。つまり、そうした市場には確定すべき利益があったという説明の方が納得がいくだろう。

 別の市場でポジションを失った多くの投資家がマージンコールを受け、ブローカーに対して追加証拠金を入れざるを得なかったという可能性も十分に考えられる。その場合、現金の入手先は長期間好調だった日本への投資ということになるのだ。

 日本の金融政策の再調整が世界中の市場――例えばユーロ圏のソブリン債の高騰や新興国市場の通貨などに――に多大な影響を与えていたので、今回の急激な利益確定の動きにも世界的な波及効果があり、世界各地で相対的なバリュエーションが調整された。

 ソシエテジェネラルの通貨ストラテジスト、キット・ジュークス氏によると、23日の市場の動揺は、FRBが国債購入を「いつ減らすのかという問題」ではなく、「ボートの片側のポジションが多くなり過ぎて、転覆しそうになったこと」が原因で起きたという。
(引用元:WSJ)