2013年5月18日土曜日

平成26年度予算のここに注目

日本が直面する構造的な問題と解決策を2013年版の骨太の方針が示し、それが来年度予算に反映されるようであれば、ばら撒き批判を跳ね返し、「強い日本」を目指して邁進することになります。同時に、「国策に売りなし」なので関連銘柄に先回り投資しておくことで大きな収益機会ともなりえます。 逆を言えば、Big Data、観光立国、英語教育強化などの耳ざわりのよい言葉を並べても、下記7つへの重要課題への切込みがなく、予算も付けられない「骨抜きの方針」となれば、アベノミクスの熱狂は数年以内に終わる可能性が極めて高くなります。

重要課題1:少子高齢化対策

日本の最大の構造問題が「総人口が減って、老人の割合が増えていること」です。人口が減るから、消費も減って国内市場が小さくなります。また、輸出で稼ぐにも労働人口も減るので働き手がいません。おまけに定年制度があるので未だ働ける60歳から65歳で引退して年金で旅行三昧となる方が多くいる一方で、この制度が年金財政を圧迫し、若い世代と子供たちの負担を先食いしています。 これをきちんと解決するには、
  1. 総人口を増やす(子供を増やす)
  2. 労働者を増やす(女性や高齢者にもっと働いてもらうか、現実的ではないが数千万人単位で中国などから移民を受け入れる)
  3. 年金と老人医療費を減らす(支給減額、支給年齢の引き上げ、医療費自己負担率の引き上げ)
を行うしかありません。 対策がしっかり採られるなら、保育所ビジネス、定年と年功賃金の廃止による転職・就労支援サービス、ジェネリックに強い製薬会社病院経営コンサルなどに大きなビジネスチャンスが生まれることになります。

重要課題2:防衛費の増額

中国が実額では年間20兆円とも言われる国防予算で空母機動艦隊の創設や次世代戦闘機の導入を進める一方、尖閣問題は日中武力衝突の危険をはらんだままです。このため、今年度予算では少額の増加に過ぎなかった防衛費が“異次元の増額”となる可能性があります。 仮に、“普通の国家並み”と言われるGDPの3%なら、現在の約3倍の15兆円程度にもなり、国内や米国の防衛関連企業には莫大な市場が創造されることになります。

重要課題3:財政再建

年金を含めた社会保障費の削減と消費税の大幅増税が教科書的な対策です。しかしながら、安倍首相や竹中さんの考え方を推測するなら、「物価目標2%達成と経済成長による税収増」という表現になりそうです。 つまり、「社会保障費を直接大きく削減し、消費税を20%にする」という選挙に負ける政策はとらず、「円安と成長戦略でインフレを起こして通貨価値を下げて積みあがった公的債務を実質的に目減りさせ、同時にマクロスライドを活用して年金も実質的に減額する」ということです。 この場合、今後も継続的に円安が進展し、国内の物価が上昇するので米ドルなどの外貨や金への投資が有効となります。

重要課題4:TPP参加

これは必然的に規制緩和の柱となります。といっても、大手メーカーは過去の円高に懲りた経験とアセアン統合などをにらんで、生産拠点の戦略的な海外移管をさらに進めると思われます。 そうなると、ほぼ確実にメリットを期待できるのは規制緩和で輸出入が活発になって儲かる総合商社各社といえるでしょう。また、農地の集約化や株式会社の農業参入自由化などに加え、国内農家の競争力強化のための予算増額で種苗、農機メーカーにも恩恵があるでしょう。

重要課題5:道州制導入

地方経済の真の活性化を目指すのであれば、現在の中央省庁が管理し、人口が減っても統合されない都道府県を再編成する必要があります。大地震への対策という観点からも東京一極集中を避け、地方の拠点都市に権限を与える道州制の方が合理性があります。組織論的に言えば、情報処理能力が発展した現代では市町村-都道府県-国という3段階よりもフラットな組織への移行が可能と思われます(企業の中間管理職が不要になる“中抜き”と同じです)。 これに加えて地方都市の効率化のためのコンパクトシティ構想に多額の予算が付けば、ゼネコンや不動産業者にますます追い風になると思われます。

重要課題6:海洋資源開発

海洋資源の中でも本命のメタンハイドレートや南鳥島のレアメタル開発は海上掘削、石油開発、特殊ドリル、造船、プラント会社などに大きなメリットがある長期テーマとなります。加えて、洋上風力発電、波力発電などにも莫大な開発予算がつけば、重電各社にもメリットが出てきます。 従来と桁違いの予算が付くのか、掛け声だけで少額の増額に過ぎないのかが要注目です。

重要課題7:バイオ・新薬開発

iPSやインフルエンザ新薬などもおそらく盛り込まれるので、どの程度の予算が付くか、新治療法や新薬の承認プロセスの簡素化・欧米とのプロセスの統合ができるのかがポイントです。 また、バイオベンチャーに対する創業支援、資金調達支援措置なども“目玉”として盛り込まれる可能性があるので、骨太の方針や来年度予算案発表直前にバイオベンチャー株を仕込むことも一案です。

投資戦略を考えるなら

異次元緩和で日銀と戦っても勝ち目がないのと同様に、潤沢な国家予算がつくセクターの株式を信用売りしたりプット型eワラントでショートポジションを採って政府と戦うのは敗戦必至といえます。そうなると、素直に上記のポイントに沿った関連銘柄のロングが順当な投資戦略といえるでしょう。 一方、成長率の引き上げや少子高齢化対策が進まず、ガラガラの巨大建築物と手が付けられないほどに膨れ上がった公的債務だけが残れば、1ドル200円台を目指した円暴落がいよいよ始まることになりそうです。この長期悲観シナリオを想定するなら、今後数ヶ月から2年程度は予算がばっちり付きそうな分野の日本株に投資し、大きく儲かったら徐々に現金、外貨・外債や外国株の割合を高めていくことが効果的と思われます。