2013年5月30日木曜日

ファストリ、下落率5%超える 先物との裁定取引に伴う売り

ファストリ(9983)が大幅に続落している。

前日比2100円(5.6%)安の3万5250円まで下落する場面があった。日経平均株価への寄与度が高い銘柄の代表格。日経平均先物の下落が主導して現物株を押し下げている状況で、割高な先物を売って割安な現物株を買う「裁定取引」の持ち高を解消するための反対売買に伴う売りなどがファストリに出ているようだ。現時点でファストリの下落だけで、日経平均を78円押し下げている。

裁定取引とは、「アービトラージ取引」とも呼ばれ、この市場にできる価格差を利用して利益を獲得しようとする取引をいい、同一の性格を持つ2つの商品の間で、割安な方を買い、割高な方を売ることにより、理論上リスクなしで収益を確定させることができるものである。その仕組みとして、市場の価格がいずれ理論価格に近づき、乖離(価格差)がなくなることで割高や割安な状態が解消され、そこで反対売買を行なうことによって収益(利鞘)を得ることができる。

例えば、日本の株式市場でよく行われる裁定取引には、日経平均と日経平均先物を対象とした取引がある。これは、日経平均から日経平均先物の理論価格を算出し、日経平均先物に実際に付いている価格が理論価格を上回った時に「先物売り/現物買い」、一方で先物価格が理論価格を下回った時に「先物買い/現物売り」という取引を行い、先物価格が理論価格にサヤ寄せした時に反対売買をすることで、その価格差分が利益となる。(通常の取引では、先物価格は決済を先に伸ばしているため、理論上はその間の金利分だけ、現物価格よりも高くなるのが普通)

一般に裁定取引はノーリスクに見えるが、それなりの収益を確保するためには高い専門性やノウハウが必要であり、裁定取引専門の市場参加者(アービトラージャー)も存在する。実際に市場で成功するためには、(1)特定の市場や商品に関して他の参加者より情報収集が容易であること(情報収集力)、(2)豊富な資金力や取引ツールを持つこと(取引力)、(3)万が一取引が途中で不成立になっても、損害を回避する手段があること(リスク管理力)、などの強みが必要である。

なお、市場全体で見れば、裁定取引は市場間の価格差を是正する方向に圧力をかけるため、市場の歪みを正し、適正な市場価格の形成に寄与しているとも言える。ちなみに、東京証券取引所などでは、「裁定取引に係る現物株式の売買及び現物ポジション(全取引参加者報告合計)」を日々公表している。