2013年5月24日金曜日

上げ潮日本株変調、金利懸念し乱高下継続か-買い場提供も5/24

世界の主要株式市場でことしのベストパフォーマーである日本株が23日、東日本大震災時以来の暴落を演じた。当面は長期金利動向をにらみつつ、ボラティリティ(変動性)の高い相場を予想する声が聞かれる一方、買い場と見る向きもある。

  (以下引用)
23日のTOPIX は前日比6.9%安、日経平均株価 は7.3%安となり、下落率の大きさは震災から2営業日目の2011年3月15日以来(TOPIX9.5%、日経平均11%)。日経平均は午前に315円高まであった後に失速、日中値幅は1458円と2000年4月以来の大きさだった。
   
同日の日本国債市場では、先物で一時売買が停止され、長期金利は昨年4月以来、1%の大台に乗せた。22日の日本銀行の黒田東彦総裁会見を経ても長期金利の動揺が収まらず、株式市場でも不動産や金融株には売りが先行。その後、中国の5月民間購買担当者指数(PMI)の下振れを受け先物売りも増え、日経平均先物は11年3月15日以来となるサーキット・ブレーカーが午後2時28分に発動された。
   
インベスコ投信投資顧問の杉尾邦彦最高投資責任者(CIO)は、「長期金利1%乗せはまだ先という前提で投資家は株式のポジション(持ち高)を組んでいた」と指摘。しかし、金利上昇で不動産と金融というアベノミクス相場の先頭バッターが息切れし、「これだけ市場全体の下げが大きくなるとボラティリティが高くなり、当面はジグザグした動きになるのではないか」と予想する。
    

不動産や金融は先行調整、先物影響も
   
国内長期金利の上昇基調が強まる中、低金利の恩恵業種としてここまでの上昇相場を主導していた不動産や銀行、その他金融株などは既に調整に入る兆候を見せていた。長期金利が上昇基調を強めた5月以降、TOPIXが22日までに9.5%高となる中、東証1部33業種の不動産 指数は4.6%下落。銀行とその他金融も直近下げ基調を強め、銀行は21日まで4日続落、その他金融は21、22日と続落していた。
    
ベアリング投信投資顧問の溜学運用本部長は、23日の暴落に驚いたとしながらも、「これまで政府や日銀への期待、海外経済の回復期待を受け買われ過ぎていたことは間違いない。調整はあって当然だ」と冷静に受け止める。日本株の動きは成長戦略に対する催促という見方もできるとし、「リスクオフ(回避)で為替が円高になり、株安・円高の悪循環に陥ると、下げが加速するリスクはある」とも言う。
    
23日の大幅安は、このところ上昇が目立っていた日経平均先物主導の色彩も強かった。22日のTOPIXは前日比0.4%高にとどまっていたものの、日経平均は1.6%上昇。23日も午前はTOPIXの上げが限定的な中で、日経平均は一時2%高まであった。
   
立花証券顧問の平野憲一氏は、「債券先物と株式先物のアービトラージの空中戦」と解説。午前は債先売り・株先買いが先行したが、午後は一転して債先買い・株先売りの様相を呈した。金利上昇がアベノミクスの足を引っ張る可能性があるとし、金利上昇に市場が過度に反応した結果と同氏は見ている。
 

日経平均上げ突出は調整サイン

    三井住友アセットマネジメント株式運用グループの生永正則シニアファンドマネジャーによれば、「相場急上昇の後、日経平均だけが上がりだすと日本株が調整に入る典型的なパターン」のようだ。今回は、日本株全体の騰落率やTOPIX、小型株が上がらない中で、「センチメントを重視する投資家が取引する傾向がある日経平均先物だけが上がっていた」と振り返る。
裁定取引に関連した現物買いのポジションは17日時点で4兆3142億円と07年3月1週(4兆5300億円)以来、およそ6年2カ月ぶりの高水準となっていた。

   
ファンダメンタルズに変化なし
   
日本株は、短期的に調整局面入りの可能性はあるものの、相場全体の方向性に変化はないとの見方が一般的だ。パインブリッジ・インベストメンツの前野達志運用本部長は、「これまでの上昇が速かったのでどこかで調整があるとは思っていた。ただ、これは下げ過ぎだ」とした上で、「日本株を取り巻くファンダメンタルズは変わっていない」と強調している。
   
JPモルガン・アセット・マネジメントの香港在勤グローバルマーケットストラテジスト、グレース・タム氏は23日の下げについて「短期的な調整」との見解を示唆。日本株を買う機会を探していた投資家には、「いいエントリーポイントだ」と話す。日本株をオーバーウエートとしている同社では同日、さらに買い増した。
    
スイスのプライベートバンク、バンク・ジュリアス・ベアのアジア調査部門責任者、マーク・マシューズ氏は「市場は泡立っていた。日本は、ファンダメンタルズ面ではまだアトラクティブな市場で、買ういい機会。ブルマーケットは簡単には終わらない」と述べている。
    
急落から一夜明けた24日の東京株式市場は、きのうの海外為替市場や米国株の底堅さを受け、買いが先行。日経平均株価は午前に一時523円(3.6%)高まであったが、午後は一転下げ幅が500円を超え、値幅の大きい展開となっている。
   
SMBC日興証券株式調査部の吉野豊チーフテクニカルアナリストによると、テクニカル分析では日経平均は22日の終値1万5627円で主要な上値の節の1つである1万5624円に到達した。節で頭打ちとなり、昨年6月に底打ちして以降の最大の反落が生じたとし、昨年秋以降の上昇波動は当面の天井を打った公算が大きくなったと同氏は指摘。6月初旬ころまで調整が1万4100円か1万3660円まで拡大する可能性がある、と予想した。
  (引用元:ブルームバーグ)