先頃発売されたばかりの『会社四季報』夏号のデータを基に、東洋経済オンライン編集部では、全上場会社の中で今期営業利益が10億円以上、自己資本比率20%以上で、なおかつ今期最終黒字と予想される企業について、「増益額」の大きい順にランキングしてみた。増益率では算出不能な、赤字から抜け出す企業、額は大きくても増益率としては小さいため上位に顔を出さない好調な大企業も、ランキングの上位には登場している。
自動車躍進、鉄鋼も回復
鉄鋼も急回復が見込まれる。3位に入った新日鉄住金は1年通しては合併後初の決算となるが、この合併分の通期化に加え、1500億円のコスト削減計画や在庫評価損の減少も大きい。業界2位のJFEもベスト10内に入り、存在感を見せた。
急激な業績の回復に株価が追いついていないケースもあり、PER(株価純資産倍率=株価÷1株純利益)が10倍割れと、一般的に割安とされる水準まできている企業も少なくなかった。
今期黒字化の理由
鉄鋼では、電炉最大手の東京製鉄も浮上する見通しだ。これまで赤字の大きな要因のひとつとなっていた減価償却負担が、前期に田原工場の減損を実施したことで軽くなる点が大きい。薄板の苦戦は続きそうだが、建材の堅調が下支えしそうだ。スクウェア・エニックスも黒字化が見込まれる。こちらも赤字だったゲーム筐体の償却負担が減ることが大きい。ソーシャルゲームも本格化してきそうだ。
規模の大きいところでは、NTT(日本電信電話)。増益率は小さいが、子会社のNTTドコモの伸びが鈍るものの、NTTデータの堅調もあり、利益は上向きそうだ。
なお、95位に入ったDeNA(ディー・エヌ・エー)の今期PERは5.3倍。モバゲーの好調が続き、営業益が前期の768億円から900億円、来期には1000億円の大台も見込めるところまで伸びており、業績的にはこの割安指標は説明できない。やはり、大株主だったソニー(ソネットエンタテインメント名義)が保有株の売却に動いた影響が続いているといえそうだ。
合併など特殊要因で上位入り
増益要因のひとつとして大きいのが買収や合併。大規模な再編劇があれば、当然、売り上げ中心に大きく膨らむ。113位の古河スカイは、今年10月に住友軽金属と合併。世界で戦えるアルミ大手、UACJが誕生する。この住友軽金属の合併分が下期に加わり、売り上げは前期の1837億円から今期が3700億円、来期には5550億円まで拡大する見通しだ。つれて、営業益も前期の53億円から今期158億円、来期230億円まで増えると予想している。121位の日鉄商事も、今年10月に住金物産と合併を予定。日鉄住金物産となる。もともと年商1兆円規模の同社が、今期は1.5兆円、来期には2兆円規模に膨らみそうだ。このため利益も大きく増えている。なお、合併会社のROEは合併前の企業(存続会社)の自己資本を分母にして計算しているため、大きめに出ている。