2013年8月28日水曜日

株高占う「決戦の秋」 外国人が狙う銘柄は

税制議論など秋は重要日程が目白押し。外国人投資家がどう動くかを専門家と「日経ヴェリタス」編集長が解説(日経CNBC) 「外国人投資家は秋に一斉に動き出す」。メリルリンチ日本証券の岡本ゲーリー日本株式営業部長は気を引き締める。証券各社が9月以降に開催する日本株セミナーに、外国人投資家が大挙して参加するのだ。メリルやみずほ証券のセミナーには昨年の2倍の投資家が参加する。
 日本株の動向を大きく左右するのは、売買代金の約6割を占める外国人投資家の動向。昨年11月以降のアベノミクス相場で、外国人の日本株買越額は累計で11兆円を超えた。ただ足元では売り越しとなる週が目立つなど、買いの勢いが落ちている。そんな外国人の売買動向を反映し、先週の日経平均株価 は一時2カ月ぶりの安値圏に沈んだ。
■迫る相場の転換点
 外国人買いが止まったのは、重要イベント目白押しの秋を前に様子見姿勢を強めているためだ。消費税増税と法人税 減税を巡る議論、量的緩和第3弾(QE3)縮小に関する米連邦準備理事会(FRB )の判断、ドイツ連邦議会選挙──。「決戦の秋」に外国人はどう動くのか。
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海外要因で焦点となるのは米金融政策だ。金融緩和の拡大局面が終わり、正常化に向かうとの見方が広がれば、緩和マネーで押し上げられてきた世界の株式相場にはマイナス。足元では秋以降のQE3縮小を先取りする形で、新興国市場からの投資マネー流出が加速。アジアを中心に新興国で株安が進行し、外国人投資家の心理を冷やしている。
 「8対2で『消費増税すべきだ』という意見が多い」。7月から8月上旬にかけて欧州やアジア、北米に出張したSMBC日興証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは、各地の投資家との面談結果をこう語る。

国内の焦点は何と言っても税制だ。国内総生産 (GDP)比200%に達する公的債務残高への対応として、消費増税は待ったなし。また一度決めた苦い薬の「服用」をやめれば「安倍政権への信認が揺らぎかねない」(JPモルガン証券のイェスパー・コール株式調査部長)。
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半面、消費増税と法人減税がセットで決まれば、財政再建と経済活性化が同時に進むと受け止められ、日本株には好材料。「『変われないニッポン』がついに変わるという印象を外国人に与える」(シティグループ証券の阿部健児チーフ日本株ストラテジスト)点も買いを誘う。
 では「決戦の秋」に外国人が買いを入れる銘柄は何か。ここ数カ月、日本株関連の持ち高を落として欧州に軸足を移してきたヘッジファンド は、アベノミクスの恩恵を受ける内需株を中心に虎視眈々(たんたん)と日本市場への復帰をうかがう。
■マネー、中小型株へ
 一方、「外国人の長期投資家は中小型株に注目し始めている」(みずほ証券の菊地正俊パン・アジアチーフ株式ストラテジスト)。米緩和マネー縮小の思惑で新興国相場が変調をきたし、新興国株の運用成績が低迷。「新興国に向かっていたグロース株 投資の資金が、(成長期待の高い)日本の中小型株に向かっている」(大和証券の成瀬順也チーフストラテジスト)
 そうした傾向はデータからも裏付けられる。日経ヴェリタスは米調査会社ファクトセットの協力を得て、3月末から8月半ばにかけ外国人が持ち株比率を増やした銘柄を算出。外国人による秋の日本株買いの候補となる銘柄を探った。

上位に入ったのは介護サービスのツクイ (2398)や制御装置のナブテスコ (6268)など。自己資本利益率(ROE )が高いうえ、増益率や海外売上高比率が高い「2高」「3高」の中小型株が並ぶ。大型株 と比べ小口の買いでも保有比率が上がりやすい点には注意が必要だが、「外国人の中小型株買い」を裏付ける結果となった。
 外国人投資家が秋のイベントをどう受け止め、どの個別銘柄に注目するのか。2000年以降の経験則では、1年のうち最も下げやすいのが9月と10月。波乱含みの秋相場のカギを握る外国人の「次の一手」を探った。(詳細は25日付紙面に)