ブラザー工業は８月６日に今期の第１四半期（２０１３年４～６月期）決算を発表、今通期の売上高と営業利益見通しを増額した。修正後の売上高は５８５０億円（前期比１３．４％増）、営業利益３５０億円（同１７．５％増）で、期初見通しからそれぞれ１５０億円、３０億円増額となった。経常利益、純益は期初見通しに変更はない。
東洋経済では、６月発売の「会社四季報」夏号ですでに独自増額していたが、今回はひとまず、修正後の会社数値に予想を合わせる。
今回の増額の背景のひとつは、為替の想定レートの修正だ。同社の海外事業はユーロとドルで決済しているが、為替感応度は「ドル１円の変動の場合、売上高で１６億円、営業利益でゼロ。ユーロは１円で売上高で１０億円、営業利益で７億円の変動がある」（藤井宗高・執行役員財務部長）。第１四半期決算では、想定レートをドルは期初の９０円のまま据え置いたが、ユーロについては１１５円を１２０円に変更した。この面からユーロ関連ビジネスでは、単純計算で売上高で５０億円、営業利益で３５億円のプラス効果が出ている。
もっとも主力であるプリンターなどのプリンティング・アンド・ソリューション事業において、ユーロ関連売り上げは欧州の景気後退の影響もあり、通期の予想伸び率を引き下げた。これに対して米州は景気の復調に加えてプリンターのシエア上昇もあり、通期の予想伸び率を２．７％から５．３％に引き上げた。また、「今年５月からベトナムで生産しているレーザープリンターの新興国モデルを中国販売から初めて逐次アジア諸国に投入。通期でも２ケタの伸びを見込んでいる」（同）。
家庭用ミシンが中心のパーソナル・アンド・ホーム事業も増勢を維持する。懸念があるとすれば、マシナリー・アンド・ソリューション事業だ。この事業は工業用ミシンと工作機械などの産業機器が中心。このうち工業用ミシンは２ケタの伸びを見込む。背景にはバングラデッシュ、ベトナム、インドネシアなどの輸出用縫製品の量産国でのミシン需要が大きく伸びると予想されることがある。また、生産面でも中国・西安で３カ所に分かれていた工場を４月から１カ所に集約、この面からの生産効率改善も見込まれる。
問題は工作機械だ。ベースとなる需要は２輪、４輪の部品加工向けだが、ここに携帯電話関連部品メーカー向けの特需が上乗せさると売上高が大きく伸びる。ところが前期の半ば頃からこうしたＩＴ関連向け受注が大きく減速しており、前期は産業機器の売上高は４２５億円と前々期の４８６億円から減少した。今期見通しは２９８億円とさらに厳しい。第１四半期売上高は９７億円だったので、残る３四半期は約２００億円の想定だ。
「産業機器のベースの四半期需要は４０億円から５０億円」（藤井部長）なので、ベースの需要だけでは想定の水準達成は難しい。藤井部長も「想定には大口であるＩＴ部分加工向けをある程度見込んでいる」としている。産業機器分野は大口受注が想定通り入るか否かで売り上げ予想が変化する。東洋経済としては現段階での修正は行わず、会社想定に合わせる。
一方、コスト面では、４月にインクジェットプリンターのフィリピン新工場が稼働入りしたことで減価償却費が約４０億円増加するが、吸収し営業利益は増益となる。
ただ、営業外では為替の予約レートとの差額にあたる差損が発生することから、経常利益は期初見通しが据え置かれた。また、連結子会社であるべレッツアクラブジャパン向けの貸付金等債権約１５８億円の取り立て不能が判明したが、この債権に関しては過去に貸倒引当金を計上済みで業績予想に変更はない。
なお、同社の今期の設備投資額は４１７億円で、これは過去最高額だ。主要なものは１４年４月稼働予定のベトナム・ハノイの新工場建設。ここで工業用ミシンを生産する。これによって、同社としてはプリンター、家庭用ミシン、工業用ミシンの３分野で中国以外での生産拠点を持つことになるが、藤井部長は「今後のチャイナリスクを考えた戦略。新規の需要増加分は中国以外で製造することを想定している」と言う。
（百万円） 売上高 営業利益 経常利益 純利益 １株益￥ １株配￥
連本2013.03 516,066 29,775 23,144 17,826 66.7 24
連本2014.03予 585,000 35,000 32,000 18,500 69.4 24
連本2015.03予 620,000 37,000 35,000 20,500 76.9 24
連中2012.09 244,525 19,626 20,040 14,840 55.4 12
連中2013.09予 265,000 21,000 20,000 15,000 56.3 12
